生態系シミュレーター

高校生物「生態系」― つながりを動かして確かめよう

エネルギーは上に行くほど少なくなる

生産者が光合成でとりこんだエネルギーのうち、次の栄養段階へ伝わるのは一部(およそ10%)だけ。残りは呼吸で熱として失われたり、遺体・排出物として分解者へ回ったりします。渓流では、森から落ちてくる昆虫も魚の大事なエネルギー源です。

この図の見かた
  • 横棒1本 = 1つの栄養段階。下から 生産者 → 一次消費者 → 二次消費者 → 三次消費者 の順に積み上げています。
  • 棒の長さは、その段階が1年間に受けとるエネルギー量(kJ、相対値)。長さを比べると「上ほど細くなる」=エネルギーピラミッドになります。
  • 左の赤い 「↑10%」 は、すぐ下の段階のエネルギーのうち何%が上へ伝わったか(転換効率)。
  • 右の数字が各段階のエネルギー量。たとえば 10,000 → 1,000 → 100 → 10 kJ と、1段上がるごとに約1/10になります。
  • 上の段階の棒が細すぎて見えないときは「対数スケール」にチェック(桁の違いを見やすくする表示で、棒の長さは比例しなくなります)。
  • 「森から落ちてくる陸生昆虫」を増やすと、三次消費者の棒に茶色の部分(川の外から来たエネルギー)が加わります。

スライダーを動かして、「生産者の量」「転換効率」「外からの餌」が上位の段階にどう効くか確かめよう。

考えてみよう
  1. 転換効率10%のとき、生産者を半分にすると三次消費者はどうなる?
  2. 栄養段階が4〜5段階程度で止まることが多いのはなぜ?
  3. 陸生昆虫を200にすると魚の段階はどう変わる? 川の生態系は川の中だけで完結している?
模範解答例
  1. 1/2になる(例:10 kJ → 5 kJ)。各段階が「下の段階×転換効率」で決まるので、生産者の変化はそのままの割合で上位まで伝わる。
  2. 1段上がるごとにエネルギーが約1/10になり、4〜5段目ではごくわずかしか残らない。それ以上の段階の生物は、生きていくのに必要なエネルギー(呼吸で失う分を含む)をまかなえないから。
  3. 魚の段階が大きく増え、エネルギーのかなりの部分が陸(森)由来になる。川の生態系は川の中だけで完結しておらず、森とつながって物質・エネルギーをやりとりしている。だから森を守ることは川の生物を守ることにもつながる。

食べる者と食べられる者の個体数は周期的に変動する

被食者が増える → 餌が増えて捕食者が増える → 食べられて被食者が減る → 餌不足で捕食者が減る…。ロトカ・ヴォルテラ型のモデルで、川の水生昆虫と渓流魚の関係を動かします。

・時間グラフ:■水生昆虫 ■渓流魚
・右図:横軸が被食者、縦軸が捕食者。ぐるぐる回る軌跡が周期変動。
考えてみよう
  1. 捕食者のピークは被食者のピークより「前」?「後」? それはなぜ?
  2. 環境収容力を小さくすると、振動はどうなる?
  3. カマドウマを増やすと魚は水生昆虫をあまり食べなくなる。グラフはどう変わる?
模範解答例
  1. 「後」。捕食者は被食者(餌)が多い時期に増えるので、被食者が増えて餌が豊富になってから遅れて増える。捕食者が増えきったころには被食者はすでに食べられて減り始めている。
  2. 振動がだんだん小さくなり、一定の値に落ち着く(減衰振動)。被食者が上限以上に増えられないので、捕食者の急増→被食者の激減という大きな揺れが起こりにくくなる。
  3. 魚がカマドウマでも暮らせるため、魚の数は多めに保たれる一方、水生昆虫への捕食圧は1匹あたり弱まる。振動の様子や平均値が変わり、別の餌があると捕食者・被食者の関係が「森からの供給」に左右されることがわかる。

数は少なくても生態系全体を支える ― キーストーン種

予想してから実行しよう
考えてみよう
  1. ハリガネムシは「食物連鎖の頂点」ではない。それでもキーストーン種と言えるのはなぜ?
  2. ラッコの例とハリガネムシの例で、影響の伝わり方(間接効果)を比べよう。
  3. 森林を伐採すると、川の藻類や水生昆虫はどうなると予想できる?
模範解答例
  1. キーストーン種とは「個体数や生物量に比べて、生態系への影響が非常に大きい種」のこと。ハリガネムシはカマドウマを川へ飛び込ませることで魚の餌の多くを生み出し、魚→水生昆虫→藻類と影響が連鎖する。頂点捕食者でなくても、全体を大きく変えるのでキーストーン種と言える。
  2. ラッコ:捕食者がいなくなる → ウニ(被食者)が増える → ケルプ減少、と「食べる関係」で上から下へ伝わる。ハリガネムシ:森からの餌(カマドウマ)が減る → 魚が水生昆虫を多く食べる → 水生昆虫減少 → 藻類増加。どちらも直接食べていない生物に影響が及ぶ間接効果(栄養カスケード)だが、ハリガネムシの例は寄生者が「森と川という別の生態系のつながり」を通じて影響する点が違う。
  3. 森の昆虫(カマドウマなど)や落ち葉が減り、川へのエネルギー供給が減る。魚は水生昆虫をより多く食べるようになり、水生昆虫が減って藻類が増えると予想できる(日当たりが良くなることも藻類増加に働く)。落ち葉を食べる生物も減り、落ち葉の分解も低下する。

参考:Sato et al. (2011) Ecology 92: 201–207 ― 高知県の渓流で、渓流魚(ヤマトイワナ)が得る年間エネルギーの約6割を、ハリガネムシに操作されて川に飛び込むカマドウマ類などが占めていた。Sato et al. (2012) Ecology Letters では、飛び込みを止めると魚が水生昆虫を多く食べ、藻類の増加・落ち葉の分解低下が起こることを実験で示した。(モデルは学習用に単純化したもので、数値は相対値です)

外来種が入ると、つながりが崩れる

日本のため池にオオクチバス(ブラックバス)やアメリカザリガニが入ると何が起こるでしょう。どちらも特定外来生物(アメリカザリガニは条件付特定外来生物)に指定されています。

考えてみよう
  1. ザリガニだけを入れると、魚を食べないのに在来魚まで減るのはなぜ?(ヒント:水草)
  2. バスとザリガニを両方入れて、バスだけを駆除するとザリガニはどうなる?
  3. 一度入った外来種を「駆除をやめる」とどうなる? 予防が大切と言われる理由を考えよう。
模範解答例
  1. ザリガニが水草を食べたり切ったりして水草が減る。水草は在来魚の産卵場所・隠れ家・餌(水生昆虫)のすみかなので、それを失って在来魚も減る。食べる関係だけでなく「すみか」を通じた間接効果。
  2. ザリガニが増える。バスはザリガニを食べて抑えていたので、天敵がいなくなったザリガニが増え、水草がさらに減ることがある。1種だけ駆除すると、かえって別の問題が大きくなることがある。
  3. わずかに残った個体からまた増え、元に戻ってしまう。完全な駆除は非常に難しく、費用と時間もかかる。また一度絶滅した在来種は戻らない。だから「入れない・捨てない・広げない」という予防が最も効果的。